k-takahashi's blog

個人雑記用

ポテトチップスと日本人

 

  日本人の国民食として代表的なものは、米飯や味噌汁、寿司や天ぷら、そばやうどん、 そして外国発祥ながら日本で独自進化を遂げたカレーライスやラーメンも該当する(『三省堂国語辞典』にもこの2つが例示されている)。この並びに当然ポテトチップスも加わるべきであるというのが、本書の主張である。

「米を食べたいのに代用食として芋を押しつけられた」いわゆる「戦中世代」にジャガイモはすこぶる評判が悪い(この話は、「高地文明」にも出てきた)。それが今やポテトチップスは国民食扱いになっているが、それはどういう経緯・理由でそうなったのか、を論ずる本。

 

ポテトチップスはアメリカ発祥(少なくとも日本にはアメリカから入っている)で、戦後は米軍向けやイベント用の特殊な高級おつまみという扱いだった。これが急速に普及するのが1967年の湖池屋ポテトチップス。これの第一段が塩味ではなく「のり塩」だったのがポテトチップスの和風アレンジの第一歩。その後カルビーが「100円」で売り出した(1975年)ことで急速に大衆化が進んだ。

 

この大衆化がポイント。まず1960年代。戦後の食糧難が一区切りつき食べるものに不自由しなくなり、味の嗜好が甘いものからしょっぱいものへ変化していった。(これで割を食ったのがサツマイモ)

日本人好みの味として次に出たのがコンソメ。といってもフレンチ風ではなく、日本の出汁好みがベースになっている。こうした日本人好みの味が1980年代の子どものおやつとして好まれた(安くて、持ちが良く、手間がかからない)。更に、このフレーバーのバリエーションが普及に拍車をかける。バリエーションの典型例がカラムーチョ、わさビーフ、ピザポテト。コンビニ棚狙いを主な理由にバリエーションは爆発的に増加する。

その後、「健康に悪い」と言ってバッシングの対象にされるが、「下流」の人々にとって手頃な楽しみであることから人気は続く。

そして、最近の高級ポテトチップス。高級といってもポテトチップスとしては高級ということであくまでも庶民の手の届くところにある。健康志向の商品も登場する。

 

2017年には台風の被害で北海道の農産物に大打撃があった。その中にはジャガイモもあったのだが、これがニュースでは「ポテチショック」として伝えられた。これは「ポテトチップスが日本社会に必要不可欠な食べ物であることの証」(No.3252)。

 

ジャガイモの歴史が飢餓・貧困と切っても切れないのは事実だが、ちょっと「下流」とかいうところを強調しすぎな印象を受けるし、世代論の強調も牽強付会を感じるが、面白く読めた。