著者名のミドルネーム(?)のウルドは、モーリタニアのバッタ研究所のババ所長から授かったもの。称号のようなもの。
表紙のコスプレも、プロモーションのために自らやっているそうだ。
今までアフリカのバッタ問題が解決されなかったのは、私がまだ現地で研究していなかったからだ。(No.167)
ノリと勢いでバッタ研究をしている人というイメージだが、内実は非常にしっかりしていて、研究の位置づけ、ポスドクの大変さ、研究計画の大切さ、アピールの工夫、などがきちんと書かれている。
上述のババ所長も、研究所の運営に大変な苦労をしているのだが、
父の言った通り、私には自由な時間がなくなり、社会の奴隷になってしまった。しかし、私がバッタと闘わなければ誰が闘うというのだ? 私は神に誓ったように人の役に立ちたいのだ(No.847)
という方である。
さて、バッタ研究のためにモーリタニアに渡ったはいいものの、大干魃の影響でバッタが現れない。他の昆虫を研究したり、フランスの研究所と共同研究したりしてしのぐが、バッタの研究はできない。そんなときの話。
バッタにとって最大の天敵は研究者だ。研究者は、今はまだ知られていないバッタの弱点を暴く能力をもっている。バッタがこの先も大発生し続けていくためには、研究者の前に姿を現し、弱点を握られてはいけないのだ。つまり、今回も私に恐れをなし、バッタは身を潜めたに違いない。(No.1999)
しかし、2年間バッタは現れず、著者は無収入になってしまう。
が、この後に本気のプロモーションをかけて、研究費を確保。帰国直前に大発生の観察もすることができた。
ここで、バッタの移動パターン(移動距離、好み、休息の仕方)を分析するシーンが挟まれ、フィールドワークでの観察・分析が確かに蝗害対策に役立つことが示される。
文章が上手くて面白可笑しく読めるが、背景はしっかりしている。以前読んだ、
アフリカにょろり旅 - k-takahashi's blog に通じるものがある。
(そう言えば、にょろり旅にも地雷原の話が出ていたが、本書も地雷原に阻まれてバッタを見送らざるをえないシーンがでてくる。戦争は科学の敵だよなあ)